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大統領制度って、強大な権力が大統領に与えられていて、 国民に選ばれた大統領が国をどんどん引っ張っていく、 そういうイメージがある。 そういえば、日本でも、首相公選制や大統領制の導入が、 2年ほど前に議論されていましたね。 結論から書けば、アメリカ大統領の権限は絶大というのは、そんなのは幻想である。 アメリカ人と話をしていると、内閣総理大臣と違って、 アメリカの大統領は権限が弱いからねぇ という話が出てくる。 え、日本の総理の権限なんてもっと弱いよ・・・って思わない? この認識の違いはどこからくるのか? アメリカの制度は、三権分立が厳格だ。 三権分立は、フランスのモンテスキューによって提唱されたもので、 国家権力を立法・行政・司法に分けて、互いに牽制させることで、 国家が国民の権力を不当に侵害することがないようにしようというアイデア。 日本やイギリスの場合は、首相が国会の多数派のトップがなるようになっている。 いわゆる 「議院内閣制」というやつだ。 日本の場合は衆議院での投票で決まるし、イギリスはそれが慣例だ。 つまり、行政権の長が、立法府の権力も握ることになる。 さらに、内閣に法案の提出権が認められている。 これは相当に強大な力である。 例えば、日本。 内閣は、通常国会に100から150本近い法案を出すが、 わずかな例外を除き、ほとんど(90%以上)その国会中に通過する。 国会審議中に条文の変更が行われるのもわずかであるし、 変更されても微々たる物であることが大半である。 予算も何10兆円単位の予算案を提出するが、 ただの1円たりとも修正されることはない。 1月末に提出して3月末には通過するのだ。 これはあまりにも例外的だが、議院内閣制の行政権の力は強い。 日本の場合は、これが行政の長である総理ではなく、 各役所、つまり官僚の間に分散されている。 それが、結構問題になっているわけだが。 さて、一方でアメリカ。 確かに、行政権の中での大統領の力は強い。 また、大統領は国民に直接選ばれているという点で、 議会から独立した権威・正当性がある。 だが、そもそも行政権の力が弱いのである。 アメリカの政治システムは、政治学の授業では、大統領制と片付けることはしない。 [Separated System with shared power] 「権力分散制度」とでも訳せばいいのだろうか、そういう言葉を使う。 つまり、議会と大統領で権力が分かれてしまっているのだ。 大統領がこういうことをしたいと方向性を打ち出しても、議会を通らないとだめ。 議会が大統領の提案を取り上げるかどうかも分からない。 予算案も2月の最初の方に案を議会に示すが、 議会は、独自に審議して大幅に違う案を通すこともある。 大統領には拒否権が用意されているが、 お互い譲り合わないと、何も進まないという状態になってしまう。 ちなみに、アメリカの連邦予算年度は10月1日から始まる。 つまり、審議に8ヶ月近くかけるのである。 一方で、州や地方政府は7月1日から始まる。 予算年度の始まりが連邦と地方で違うのだ。 それでどうしてうまくいっているのか、不思議である。 10月になっても13本ある予算の多くが通っていないということも毎年のこと。 クリントン時代には、何ヶ月も攻防が続いて、最後にはクリントン大統領が、 連邦政府を休みにしてしまうという強硬措置に出たことまである。まじで。 話を戻す。 議会と大統領が別々に権限を持つ。お互いに譲り合わないことができる。 そのため、[stalemate] チェス用語から派生した言葉で、 政治的手詰まりという状態を起こすことがしばしばある。 そのため、政治が硬直化し、改革も少しずつしか進まないことがよくある。 特に、大統領と議会の多数派の政党が異なる場合や、 利害関係者がたくさんいて議会へのロビー活動が盛んな場合によく起こる。 アメリカの議会議員は、党による拘束以上に、選挙区の利害のために動くのだ。 さて、ここで代表的な事例を示しておこう。 一つが古い話であるが、1910年代のウッドロー・ウィルソンである。 第1次世界大戦後、理想主義者の彼は、国際連盟の結成を提案した。 アメリカ大統領の熱烈な働きかけで実現することになったにもかかわらず、 議会の反対でアメリカは加入を見送ることになった。 米ソという超大国が加入しなかったことで、国際連盟は十分に機能しなかった。 もう一つがクリントン大統領。 1992年の大統領選挙で勝利を収めてクリントン大統領。 健康保険制度の改革を公約に掲げ、 ヒラリー・クリントンをトップにすえて、これを強力に進めようとした。 ところが、反対勢力が巧みなロビー活動と広報戦略を展開し、 「クリントンの制度改革はダメだ。」という印象を植え付けることに成功した。 このため、彼の制度改革は頓挫することになった。 選挙の公約として掲げ、大統領自身も非常に力を入れていたのにである。 「クリントンの保険制度改革についてどう思うか」と聞かれれば、 「あれはやらない方がいい」という声が過半数を占めることになった。 「・・・という保険制度改革についてどう思うか」と内容を説明して質問すると、 賛成の声が大半だったにもかかわらずである。 イメージって怖いですね。 おかげで、アメリカの健康保険制度は、 世界で一番金を使っているにもかかわらず、 4300万人以上の人たちが、保険を購入することができず、 高い医療費も払えないという状況である。 まぁ、 「福祉国家じゃないからいいんだよ、アメリカは。」 というところかもしれないけど。 議会に対して影響力を行使する方法はいろいろあるが、 とりあえず、そもそもの制度設計が議会と大統領の権力を分けている。 そのため、政治的に膠着した状態が生じることがよくある。 これは、憲法を作った段階で予想されていたことで、意図されたことでもある。 「憲法起草者は、現在の状況を見てほくそえんでいる」 と言っている政治学者もいるぐらいである。 アメリカは大統領制度だから強い・・・・ それは、ちょっとした誤解である。 もっとも、外交・軍事という面では別の政治力学が働く。 日本国内を見るときには日本の国内政治問題、 アメリカを見るときには、外交・軍事を見る傾向があるから、 アメリカの大統領は強いと思うことがあるのかもしれない。 あと、日本の首相も国民も、 外交・軍事の分野で鍛えられていないことも原因かもしれない。 立法と行政との関係で大統領の権限が制約を受けているアメリカ。 ただ、行政の中での大統領の力は大きい。 大統領命令を発することでかなり多くのことができる。 特に、法律がない分野については、この効果は絶大だ。 大統領になって最初にやる仕事は、 中絶に対する助成金を出す(出さない)の大統領命令を発することらしい。 また、行政の最終意思決定者は、大統領一人なのである。 日本の場合は、内閣の閣議で意思決定をする。 すべての国務大臣が閣議室に集まって、 せっせと書類に署名して、意思決定をするのだ。 全会一致の原理があるから、一人でも反対したら決まらない。 言い換えれば、一つの役所が反対したらダメなのだ。 総理や官房長官が裁定する場合もあるが、 何よりも、族議員を交えた役所同士の交渉で妥協が成り立つ。 さらに、アメリカの大統領は、4000人以上(だったと思う?)の職員を任命する。 ポリティカル・アポインティーというやつだ。 議会の承認が必要な場合もあるが、 局長級以上を大統領が任命することができる。 大統領の考え方を反映しやすい仕組みになっているともいえる。 まぁ、いろいろ書いたが、 -アメリカの大統領の力は、議会の制約があるので弱い。 だが、行政府の中では、非常に強い。 -日本の行政の力は、非常に強い。 だが、官僚に力が強く、総理の力は制限されている。 といったところか。 #
by presidentbush
| 2004-07-02 09:35
| 大統領制度
銭湯でゆったりと湯船に使っていると、よく、 「にいちゃん、大統領と内閣総理大臣ってどう違うんだい?」 とおっちゃんに訊かれる。 僕なりの説明をすると、 1)どちらも、国民に選ばれた行政の長である。 2)大統領は、国家の元首も兼ねている。 3)内閣総理大臣の場合は、別に国家の元首がいる。 4)大統領と内閣総理大臣がいる場合には、大統領の権限は限定されている。 要するに、「権力」と「権威」がどこにあるかという問題である。 「権力」というのは実際の行政権であり、 具体的な国の方向性を決定する「力」である。 「権威」というのは国のトップであるということであり、 その地位に基づいて、最高レベルの行為を行うことである。 例えば、大使の接受、勲章の授与、宣戦布告、首相や閣僚の任命など。 (*)アメリカでは宣戦布告は議会が行う。 ちなみに、この権威の部分を、 国民に選ばれた大統領が行えば 「共和制」。 世襲の王族が行うのであれば 「君主制」。 大統領制度の国といえば、 アメリカ、ドイツ、フランス、韓国あたりが有名どころ。 そういえば、サダム・フセインも大統領でしたね。 内閣総理大臣(首相・Prime Minister)がいる国といえば、 イギリス、日本、カナダ、オーストラリア なんかが代表例。 あと、ドイツ、フランス、韓国、インドなんかにもいる。 こういう国には、大統領と内閣総理大臣の両方がいるのだ。 内閣総理大臣のイメージは、「権威」を司る元首とは別に、 行政を進める人がいるというイメージ。 日本だと天皇という象徴がいて、 叙位・叙勲、法律の公布などは天皇の名前でやっているし、 外国の大使が着任したときも、その接受は天皇陛下が行う。 国賓が来たら、宮中で晩餐もするしね。 形式的なことを、内閣の助言と承認に基づいてやるのが天皇。 イギリスも女王陛下がいて、彼女の名前で勲章が与えられたりする。 カナダやオーストラリアについても、イギリス女王を国の元首にしている。 歴史的に見ればよく分かる。 昔は絶対君主だったが、仕事をする上で官僚機構が必要になった。 その官僚機構を束ねる役職として、大臣のトップである内閣総理大臣が生まれた。 Prime Minister という名前は、第1の大臣という意味だ。 そのうちに、民主主義制度が根付いていって、 この役職が議会で選ばれるようになった。 国によって事情は様々だが、こういうイメージで捉えれば、 大体のポイントは押さえられていると思う。 大統領は、国民に選ばれて権威をつかさどる。 アメリカの大統領制が、大統領制度の典型と思っている人が多いが、 実は世界的には、非常に例外的なシステムだ。 大体は、権威的なところだけをやるか、それに軍事・外交がつくぐらいだ。 ドイツやインドは権威的なこと、フランスは軍事・外交がついている。 そこはそれぞれの国の歴史があるから、一括りはできない。 ただ、首相が国内行政全般の実験を握っている場合が多い。 もう一つの大統領制は、独裁制度だ。 立法・行政・司法の上に君臨するだけの権力を持ってしまう。 サダム・フセインや一部の発展途上国に見られる制度である。 アメリカの大統領には、行政権全般が与えられている。 それでも、立法や司法までを含んだ権限は与えられていない。 これは、非常に例外的なシステムであるといえる。 ま、大統領は、ナンバーワン。 でも、国によっては形式的だったりすることもある。 内閣総理大臣は、行政の中ではナンバーワンだが、 国全体としては、別にナンバーワンがいる。 そういう風なイメージで捉えておけば問題はない。 #
by presidentbush
| 2004-07-02 07:32
| 大統領制度
アメリカの政治と選挙は金がかかる。 とにかく選挙で勝つには金がかかる。 CMを流したり、ダイレクトメールを送ったり、 激戦州を訪問してスピーチしたり、選挙の専門家を雇ったり・・・。 例えば、ある時期における民主党ケリー候補の場合。 5900万ドル:CM 1340万ドル:選挙コンサルティング費用 1270万ドル:旅費 (飛行機のチャーターとか) 320万ドル:資金集めのための必要経費 ちなみに、現職大統領や副大統領は、この「旅費」が無料。 だって、公務で出かけて、演説するわけだから。 金をかけた量が、選挙の行方を左右する。そういう世界だ。 アメリカで政治学を勉強していたときに、 クラスメートが引用していた言葉が非常に印象的だったので紹介する。 「政治に必要なのは、二つある。 一つ目は、カネだ。二つ目は...忘れた。」 「もちろん、カネがすべてというものではない。 しかし、金はすべてのものと交換することができる。」 この言葉の是非を議論しようという気はないが、 そういうメンタリティーの人が、選挙を仕切り政治を考えている。 そして実際に金がなければ、勝てる選挙を戦うことができない。 それがアメリカの選挙の現実なのである。 さて、では、どれぐらいの金が動くのだろうか? 既に上でちょっと触れてしまったが、答えは億単位である。 億円ではなく、億ドル。 今年の選挙は、特にお金の動きが激しい。 「絶対ブッシュ!!」「ブッシュ再選絶対阻止!!」 という憎悪にも近い激しい対立があるからだ。 また、クリック一つで簡単に献金できるようになったのも原因だろう。 2002年に一人からの献金額が2000ドル以下と定められたにもかかわらず、 両陣営とも記録的な資金集めの成果を残している。 ちなみに、選挙資金集めのことを「fund raising (ファンド・レイズィング)という。 6月21日時点での情報では、 ケリーは、民主党候補者としては史上最高の1.5億ドルを集めた。 1.2億ドル以上を既に使っている。 まだまだ資金集めに精を出している。 ブッシュは大統領候補者の記録である2.2億ドルを集めた。 1.8億ドル以上を既に使っている。 4月に資金集めは終了。後は共和党のためにまわしている。 ちなみに、党大会の手続を経て、 党の候補者として正式に任命されれば、 政府から7500万ドルの選挙資金が与えられる。 日本円で80億円以上・・・・・・。 この資金。受け取らないこともできる。 受け取れば、自分で集めたお金を使えることができなくなるからだ。 ただ、現時点では、両候補ともこの公的資金を受け取る方向らしい。 まぁ、それをみこしての資金の使い方だからね。 この党大会については、今後触れることになるが・・・、 民主党は、7月末にボストン(ケリーの地元、民主党の牙城) 共和党は、9月上旬にニューヨーク(9・11と絡めたい思惑バレバレ) でそれぞれ行うことになる。 カネとの関係で眺めれば、ポイントは党大会の時期。 選挙が11月上旬。 党大会から、ケリーは3ヶ月強。ブッシュは2ヶ月弱。 同じ7500万ドルの資金が与えられるわけだが、 ブッシュの方が集中的に資金を使えるわけである。 もちろん、9月までは自分の資金を使えばいい。 今年目立ったのは、ブッシュの集金力。 まぁ、献金すれば政策を通してくれる人ですからね。 特に大企業(製薬・金融・不動産)にとっては最高です。 4月には、目標額に達したので、もう自分のための資金集めはしない、 他の共和党候補者のための資金集めをするという。 そう、忘れてはいけない。 大統領選挙の年とは、下院全部と上院の3分の1についても選挙がある。 ここでもまた大量の金が動くのである。 ところで、前述のとおり、2002年に一人からの大量の献金が禁止された。 一人2000ドルと決められてしまったのだ。 そういう状況の中でどうやって金集めをしたのだろうか。 この集金のインセンティブの与え方が実にユニークである。 共和党の場合、 100,000ドル(1100万円)以上集めた人を「パイオニア」、 200,000ドル(2200万円)以上集めた人を「レンジャー」、 300,000ドル(3300万円)以上集めた人を「スーパー・レンジャー」と呼んでいる。 つまり、100人以上の人にお願いして、献金してもらうのである。 そしてその集めた額に応じて、こういう称号がもらえるのだ。 民主党にも同じような制度がある。 さて、この「スーパー・レンジャー」が62人もいる。 そのほとんどが、「パイオニア」か「レンジャー」の称号も持っているというから、 50万ドル以上の貢献をした人もたくさんいるということである。 もちろん呼称をもらうためだけに献金するわけではない。 この前、フロリダだったかな? で、 レンジャーを集めたパーティーにブッシュ大統領が参加した。 大統領へのアクセスというのは、アメリカの政治の中では非常に強い力である。 また、ブッシュ政権中に、政策上の便宜を図ってもらった人物が多額の献金をしているし、 2000年に多額の献金をした企業などは、ブッシュの政策で利益を得ている傾向がある。 (う~ん。ここは断定で書いていいものかどうか・・・。ま、大丈夫でしょう。) ちなみに、ハリウッド・スターも選挙で大きな貢献をする。 彼らには集客能力と金集めの力があるからだ。 ほら、例えば、日本の民主党党首のパーティーが東京ドームであって、 モーニング娘。とかSMAPがフル出場したら、大金を積んでも行く人いるでしょ? そういう役割を果たしてくれるのだ。 600億円近い金が動く大統領選挙。 広告業界などに利益がいくといっても、副次的なもの。 まぁ、民主主義のコストというところなんでしょうねぇ。 #
by presidentbush
| 2004-07-02 01:15
| 大統領選挙2004
今回の選挙の結果に、もしかしたら影響を与えるかもしれない話。 知る人ぞ知る「緑の党」。 二大政党制のアメリカにおける第3政党だ。 民主党よりもリベラルで、当然ブッシュは大嫌い。 2000年の選挙では、ラルフネーダーを候補者としてよく戦った。 よく戦ったから、民主党の票を喰っちゃって、ブッシュを勝たせちゃった。 (前に書いてますのでそちらを参考にしてください。) さて、2004年。この党はどう動くか?? マニアは少し注目していた。 独立で候補者になるといっているラルフ・ネーダーを党の候補者とするか、 ディビッド・コブという人にするか。 このディビッド・コブ、大統領候補者としてにおいて、まったく重要ではない。 彼の選挙戦略は、次のとおり。 「緑の党を応援している人は、民主党の候補者(ケリー)に投票して、 ブッシュをやっつけよう!」 そんな戦略だから、独立でやるっていってるラルフ・ネーダーを 緑の党候補者にしようという票がたくさんあったぐらい。 さらに、驚くことなかれ!! いや、僕は驚いた。 このコブさんの副大統領候補(ランニング・メイト)、Pat LaMarche。 苗字はなんて読むか分からないので、パットさんと呼んでおこう。 このパットさん。 「私は、大統領選挙ではケリー氏に投票します。」 ガーーーン。 「比例は公明」って言っちゃう自民党候補者以下だよ。。。 【5時間後に追加】 と思ってたら、「その報道は間違い。誰に投票するかは私的な問題」 だってさ。 #
by presidentbush
| 2004-07-01 23:50
| 大統領選挙2004
アメリカの選挙は、情報戦。 どの州のどの地区には、どういう世代のどういう人種の人がどれぐらいいるか。 何を訴えかければ、その人たちの票を取れるか。 どの時間のどの番組をどの層が見ているか。 候補者のどういう政策がどういう有権者に好かれているか。 候補者のどういう性格が好かれ、また、嫌われているか。 自分の政策をどういう風にアピールしたら一番効果的か。 そういうことを実に詳細にチェックする。 こうした膨大なデータに基づいて、戦略を決めていく。 そう、まさにプロの世界である。 どれだけ極め細かく分析して、対応したか、それが選挙の行方を左右する。 CMを流すのもめちゃくちゃ金がかかるから、 事前にデータを徹底的に洗う。 さて、何が重要といっても、国民の意識を知ることだ。 そのために、候補者は、POLLSTERという専門家を雇う。 彼らがやることは実に面白い。僕にとってはね。 まさに、統計学と心理学と社会学が融合した世界なのである。 (1) 一つの手法が世論調査だ。 まぁ、日本だと内閣府が毎月やって発表しているが、あれの政治版かな。 これを大規模にやれば、 自分と対立候補が有権者にどう見られているかがわかるし、 どれぐらいの知名度があるか、 継続的にやれば、全体としてどういうトレンドがあるか分かる。 また、州ごとの情勢も分かる。 それを各陣営がやっているのである。 彼らの仕事はデータを集めてくるだけじゃない。 それを分析して、候補者にアドバイスする。 例えば、 「社会保障政策の受けが相手候補よりもいいから、 これを中心に戦いましょう!」 ってな感じですか。 「クリントンは信用できないやつって思われてるから、ここを叩きましょう。」 「ブッシュの人格を攻撃してもあまり効果がないようだ」 「レーガン候補のキーフレーズは、"America can do"でいこう!!」 そういうことが実際に分かるのである。 また、スキャンダルが発覚したり、相手側が人格攻撃してきた場合、 その影響がどれだけあるかを、その日のうちに聞き取り調査し、 ほうっておいても大丈夫か、どう対応するかを決めるのである。 (2) 次の方法がフォーカス・グループ。 12-15人ぐらいにディスカッションしてもらう。 例えば、A州の白人中年女性たちをホテルの部屋に集めてやる。 そうすれば、その人たちがどういう考えを持っているのか、 どういう風にアプローチしたら自分の候補者支持に回るのか、 そういうことを調べるのである。 1992年のクリントンは、これを通じて、自分が不人気な本当の原因を探り当てた。 女性癖の悪さよりも、 「なんだ、他の政治家と同じじゃん」と思われてたことの方が、 意外に大きかったのだ。 じゃ、どうしたか? 普通の政治家と違うところをアピールしたのである。 子供の頃からの生い立ち、母子家庭だったこと、義父にいじめられたこと、 それを乗り越えてエール大学・ジョージタウン大学に入ったこと、 そしてアーカンソー州の知事にまでなったことをCMでアピール。 さらに、普通のトーク番組や音楽番組にも出演、 サックスを吹いたりして、親しみやすさ、 普通の政治家と違うところをアピールした。 これが大成功。 見事に不人気から立ち直って、一気に大統領選の勝利まで収めた。 ブッシュも、自分の政策どういう言葉で説明すればいいか、 こうした意識調査を使って、分析しまくっている。 「相続税」を「死にかかる税金」という風に言い換えて、 国民の相続税減税に対する世論を一気に変えてしまった。 まぁ、レトリックの世界だけど、政治はこれで実際に動くわけですね。 (3) そして、ビックリするのが、ダイアル・グループ。 集めた人に小さな機械を持たせる。 その機械には、0から100までの数字が書かれていて、 ダイアルがついている。 これをひねって、自分が思う数字に合わせるわけだが、 これを使って何をするのか? これから流そうとするCMや、大統領候補者のスピーチを見せるのだ。 そして、好印象を受けたら、その度合いだけダイアルを回すのだ。 インパクトがあればダイアルを回し、面白くなくなればまた逆に回す。 そのダイアルの数字は、回線を通じてオンタイムで集計される。 瞬間瞬間のデータが心拍計のように鮮明に取れるわけだから、 どの言葉、どの行動が、有権者にインパクトを与えるかが、一目瞭然。 後は、そのインパクトのあるフレーズを繰り返し使っていくことになる。 ピンポイントで何が良かったのか、何が悪かったのかが分かる、すさまじいワザ。 はじめて聞いたときはビックリしました。 でも、アメリカ人の政治が好きなやつは結構知ってるみたい。 日本でももしかしたら電通とかやってるのかな?? こうした情報戦こそが大統領選挙を支えているのである。 ちなみに、こうした手法は選挙だけじゃなくて、 大統領になってからも使っています。 クリントンの意識調査好きは有名で週に3回。 モニカ・ルインスキー不倫騒ぎのときは、 毎日調査させていたとか。 ん?まぁ、税金なのかな? #
by presidentbush
| 2004-06-09 20:27
| 大統領選挙2004
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